The Blue Envelope #2
#ITBS_text
森道市場の出演のため宿泊している蒲郡のホテルにて暇つぶしに書いていますのでなんの意味もないです。拡散力が乏しいここでは、ある程度時事ネタも扱えます、最高!
起こっていない!まだなにも!
星野源(以下敬称略)の新譜が出た。日本指折りの才能の持ち主が、選りすぐって作り上げた珠玉の曲たち。こんなものは上澄みも上澄みで、世におけるごくごく希少部位にすぎない。だからこそ注目に値するのであり、話題になるのは必然のようにも思えるが、最近はそうも思わない。星野源は本当に一切悪くないのだが、おれはこう感じてしまう。なんてバランス感に欠けているんだと!おれは才能のないやつ、ポンコツなやつ、適性がないやつ、やる気がそんなにないやつの音楽も聴きたいの!
このきまりの悪さを是正し、バランスをとるには、市井の人間のどうしようもない曲で世を埋め尽くすところから始めないといけない。とにかく絶対量が足りていない。おれたちは、どうでもいい、だがしかし個人的な何かに立脚する、対してよくもない曲を作らないといけない。才能があるとんでもない作品も、AIが作ったものも、それら全てを物量で圧倒するほどに。おまえらのも聴くし、ついでのおれがこの1週間で作った、愛すべき掃いて捨てるようなカスの曲も聴いてくれや。
バーグハンバーグバーグの広告だってそうである。才能が、人気が、能力が、人脈がある人や組織が、東京でなんかごちゃごちゃやっている。怒ったり、批判したりする人もいるであろう。でもじゃあおれの住む京都市中京区まで広告を出してくれるのか、といったらそうではない。自分の興味関心とも、生活圏とも、関係がなさすぎるのである。
意味もなく、週に何度も来る、区域内の小中学校とマンガミュージアムの催しのお知らせしか挟まっていない、もはや儀式でしかない我が町内の回覧板をおれは愛している。しかしながら、よくも悪くも、誰も話題にしてくれない。当たり前である。なぜなら閉じていて、かつ資本的にもネットお笑い的にも侵略する価値がない場所だからである。そして、そこではまだなにも起こっていない!
実はおれたちは謎の安全地帯にいる。空中戦は終わりにしよう。安全地帯でこそ、曲を作らないといけない。星野源は、かなり厳しい、弾が飛び交う戦地でやっている。おれたちの街までは弾はこない。じゃあなんでやらないんだ。地方創生とか、ローカルのよさとか、そんなもはもうどうでもよく、安全で、気軽で、何も起こらないからやる。何かを起こすために、何者かになるためにやるのはもういいじゃないか。そんなものは一万通りあるやり方のうちの1つでしかない。
そりゃあ私も星野源もオモコロももう10年以上一挙一動をウォッチし続けていたわけですから、もう山のように、次から次へと感想は出てくるし、ネットに書きたいこともたくさんあります。でも教えてやらない!
やり取りを始めるのは、おれも曲を作り、向こうも曲を作ってきてくれた時のみである(しつこいようであるが、ここでの”曲”は創作物全般のメタファーである)。星野源のような、才能のある人間が、変に神聖化され、背負わされ、苦労をしなければいけないのは、そこらへんのやつらが適当に曲を作らないせいであるといいたい。目線を揃える時が来た。出来事が起こりすぎている向こう側と、出来事が起こらなすぎるこちら側。天上から提供される話題のみで回る世界にはうんざりである。こっちからも差し出してみせよう。クオリティという面では上澄みof上澄みなものと、我々の凡庸なそれを、等価で交換しようじゃないか。